J.S. バッハ「インヴェンション第1番」解説

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J.S. バッハ「インヴェンション第1番」解説と当時の演奏法
ギターアレンジと装飾音を中心に
Invention 1

2声をきれいに演奏すること

ギター二重奏では、一人で2声を同時に演奏するわけではありませんが、各声部をきれいに演奏するためには、右手のタッチや左手の押弦といった基本的なテクニックが非常に重要です。特に、音を繋げるのか、音を適切な長さに切って弾くかというようなアーティキュレーションが大きなポイントとなります。また、演奏中に適切にブレスを挿入することで、より生き生きとした自然な流れを生み出します。

このためには発音のタイミングや音の長さを十分にコントロールできる技術が必要です。例えば、右手の弾弦と左手の押弦がタイミングよく同時に行われること、音の長さをコントロールするための左右の手それぞれのテクニックが重要です。二重奏では、この技術を活かしてそれぞれの声部にアーティキュレーションをつけ、2つの声部の独立と調和がなされるよう演奏します。

ヨハン・ニコラウス・フォルケルの「バッハの生涯と芸術」(1802年)によると、バッハの演奏レッスンでまっさきにしたことは、タッチを教えることでした。弟子たちは何ヶ月も両手のすべての指のための個々の楽節を、綺麗なタッチを念頭において練習し、少なくとも6~12ヶ月続けなければなりませんでした。しかし、弟子の中のだれかが、2、3か月たってどうしても我慢ができなくなったと分かると、練習用の楽節がいくつかつながれている、まとまりのある小品を書いてやりました。インヴェンション15曲もこれのうちです(※7)。

※7、フォルケル.『バッハの生涯と芸術』.柴田治三郎訳.岩波書店,1988,p.119-120.


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