さいたま市の小林荘友ギター教室 レッスン曲解説
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インベンション第1番 BWV772 J.S. バッハ (ギター二重奏)解説


 内容

はじめに

曲の成り立ち

「インヴェンションとシンフォニア」序文

2声をきれいに演奏すること

よい楽想を受け取るだけでなく同じく十分に展開し

とりわけカンタービレ奏法を手に入れ

加えて作曲の強い前触れが湧き起こる

アナリーゼ

フレージングとアーティキュレーション

装飾音

ギターでの表現について

あとがき

参考文献

参考サイト

 はじめに

 2019-2020シーズンの合奏曲(ギター二重奏)は、J.S.バッハのインヴェンション第1番 BWV772です。ギターでバッハといえば、リュート曲のほかバイオリンやチェロの曲をギターのために編曲して弾かれることが多いと思います。ですが、バッハはクラヴィーア(鍵盤楽器)やオルガン演奏の名手(※1)で、生涯に数百曲も作曲している鍵盤作品(※2)をギターで弾くことも意味のあることと考え、バッハの鍵盤楽器のための基本とも言える「インヴェンションとシンフォニア」の中からインヴェンション第1番を取り上げました。今回は1723年の自筆譜を基に、ギター二重奏へ編曲しました。

※1、寺本まり子.「オルガン」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.76-78.
尾山真弓.「クラヴィーア作品」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.140-142.
市川信一郎.「鍵盤楽器」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.167.
※2、Dürr, Alfred and Kobayashi, Yoshitake (eds.). Bach Werke Verzeichnis: nach der von Wolfgang Schmieder vorgelegten 2. Ausgabe. Kleine Ausgabe, Wiesbaden, Breitkopf & Härtel, 1998, p.311-406. によると、オルガン曲(BWV525-765、1085、1090-1095、1097-1120、1121、957、766-771)、クラヴィーア曲(BWV772-994)

 曲の成り立ち

 インヴェンション第1番は「インヴェンションとシンフォニア」の中の第1番目の曲です。インヴェンションは二声の対位法で作曲された15曲、シンフォニアは三声の対位法で作曲された15曲で1723年にバッハがライプツィヒ市のトーマス教会付属学校カントル兼、市の音楽監督に就任する際、本人により清書され「平均律クラヴィーア曲集」、「オルガン小曲集」とともに提出されました。この時「インヴェンションとシンフォニア」には「正しい手引き」という序文がつけられていました(※3)。
 「インヴェンションとシンフォニア」は1720年に9歳の長男ヴィルヘルム・フリーデマンのために作り始められた「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」の中のプレアンブレム(前奏曲)とファンタジア(幻想曲)にその原型が見られます(※4)。バッハ本人は9歳の時に母マリーア・エリーザベトと父ヨハン・アンブロージウスを亡くしています。自分が両親を亡くした時と同じ年齢になった長男のために「クラヴィーア小曲集」を作り始めたのには、何か思い入れがあったのかもしれません。しかし、長男ヴィルヘルム・フリーデマンも1720年7月、9歳の時に母マリーア・バルバラ(バッハの妻)を亡くしてしまうのです(※5)。

 「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」の冒頭には次のように書かれています。

Clavier - Büchlein
vor
Wilhelm Friedemann Bach
Angefangen in
Köthen den
22. Januar
Ao. 1720

ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集
1720年1月22日にケーテンで始めました

「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」序文

「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」エール大学図書館所蔵

楽譜へのリンク先

「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」(1720年)

エール大学図書館所蔵
Yale University Library. "Clavier-Büchlein vor Wilhelm Friedemann Bach : angefangen in Cöthen den 22. Januar Ao. 1720". YUL Quicksearch.

IMSLP
IMSLP. Klavierbüchlein für Wilhelm Friedemann Bach (Bach, Johann Sebastian).

「インヴェンションとシンフォニア」(1723年)

ベルリン国立図書館所蔵(Mus.ms. Bach P 610)
Staatsbibliothek zu Berlin. "Bach, Johann Sebastian: 15 Inventionen und 15 Sinfonien, 1723". Digitalisierte Sammlungen der Staatsbibliothek zu Berlin.

IMSLP
IMSLP. Inventions and Sinfonias, BWV 772-801 (Bach, Johann Sebastian).

IMSLP
IMSLP. 15 Inventions, BWV 772-786 (Bach, Johann Sebastian).

また、「インヴェンションとシンフォニア」には、本人により清書された譜の他に重要な筆写譜が3つありますので紹介しておきます。

姓名不詳の弟子によるもの
ベルリン国立図書館所蔵(Mus.ms. Bach P 219)
Staatsbibliothek zu Berlin. "Bach, Johann Sebastian: 30 St?cke f?r Cembalo (Inventionen und Sinfonien); cemb, 1724 (ca.)". Digitalisierte Sammlungen der Staatsbibliothek zu Berlin.

ヨハン・ニコラウス・フォルケルがヴィルヘルム・フリーデマンの所有する資料を基に作成されたもの(※6)
ベルリン国立図書館所蔵(Mus.ms. Bach P 220)
Bach digital. "Berlin, Staatsbibliothek zu Berlin - Preu?ischer Kulturbesitz D-B Mus.ms. Bach P 220".
(バッハ・デジタルにリンクしますが資料の中身は見られません)

ハインリヒ・ニコラウス・ゲルバー(バッハの弟子)によるもの
デン・ハーグ市美術館所蔵(Kunstmuseum Den Haag、旧名Gemeentemuseum Den Haag)
Bach digital. "Den Haag, Gemeentemuseum, Muziekafdeling NL-DHgm Source 3831: NMI Kluis F (Bachdoos n)".
(バッハ・デジタルにリンクしますが資料の中身は見られません)

※3、山崎孝.『バッハ《インヴェンションとシンフォニア》演奏と指導のポイント』.音楽之友社,2012,p.5.
久保田慶一.「トーマス教会」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.312-314.
※4、市田儀一郎.『バッハ・インヴェンションとシンフォニーア―解釈と演奏法』.音楽之友社,1971,p.7-8.
山崎孝.『バッハ《インヴェンションとシンフォニア》演奏と指導のポイント』.音楽之友社,2012,p.5.
※5、村上隆.『バッハ《インヴェンションとシンフォニア》創造的指導法』.音楽之友社,2011,p.8-9,p.13-14.
※6、J. S. バッハ.『インヴェンションとシンフォニア』.エルヴィン・ラッツ,カルル・ハインツ・フュッスル注解・校訂.ウィーン原典版42,音楽之友社,1973,p.88.
村上隆.『バッハ《インヴェンションとシンフォニア》創造的指導法』.音楽之友社,2011,p.29-30.

 「インヴェンションとシンフォニア」序文

 「インヴェンションとシンフォニア」には「正しい手引き」という序文が書かれています。

Auffrichtige Anleitung,

Wormit denen Liebhabern des Clavires,
besonders aber denen Lehrbegierigen, eine deüt-
liche Art gezeigt wird, nicht alleine (1) mit 2 Stimmen
reine spielen zu lernen, sondern auch bey weiteren pro-
greßen auch (2) mit dreyen obligaten Partien richtig
und wohl zu verfahren, anbey auch zugleich gute inventi-
ones nicht alleine zu bekommen, sondern auch selbige wohl
durchzuführen, am allermeisten aber eine cantabile
Art im Spielen zu erlangen, und darneben einen
starcken Vorschmack von der Composition zu über-
kommen.

Verfertiget

von         
Joh. Seb. Bach    
Anno Christi 1723
Hochf. Anhalt. -Cöthe-

nischen Capellmeister

正しい手引き

クラヴィーアの愛好者、
特に学習意欲のある者に、
2声をきれいに演奏することを学ぶだけでなく、
またさらに進歩して3つのオブリガート声部を正しく十分にさばき、
またその上よい楽想を受け取るだけでなく同じく十分に展開し、
とりわけカンタービレ奏法を手に入れ、
加えて作曲の強い前触れが湧き起こる、
はっきりした方法が示されるでしょう。

作成

アンハルト=ケーテン候宮廷楽長
1723年
ヨハン・セバスティアン・バッハ


「インヴェンションとシンフォニア」序文

「インヴェンションとシンフォニア」ベルリン国立図書館所蔵

 この序文からバッハの意図を汲み取り、ギターの二重奏で演奏する際にどう活かしていくかについて考えていきたいと思います。

 2声をきれいに演奏すること

 二重奏ですので一人で2声を弾きませんが、一つの声部をきれいに弾くには右手のタッチ・左手の押弦といった基本ができることが第一です。音をつなげるのか、音を適切な長さに切って弾くかというようなアーティキュレーション、ブレスを入れて弾くことも大切ですので、発音のタイミングを十分にコントロールできるようレッスンしていきたいと思います。それぞれの声部をきれいに演奏し、二重奏で合わせていきたいと思います。
 ヨハン・ニコラウス・フォルケルの「バッハの生涯と芸術」(1802年)によると、バッハの演奏レッスンでまっさきにしたことは、タッチを教えることでした。弟子たちは何ヶ月も両手のすべての指のための個々の楽節を、綺麗なタッチを念頭において練習し、少なくとも6~12ヶ月続けなければなりませんでした。しかし、弟子の中のだれかが、2、3か月たってどうしても我慢ができなくなったと分かると、練習用の楽節がいくつかつながれている、まとまりのある小品を書いてやりました。インヴェンション15曲もこれのうちです(※7)。

※7、フォルケル.『バッハの生涯と芸術』.柴田治三郎訳.岩波書店,1988,p.119-120.

 よい楽想を受け取るだけでなく同じく十分に展開し

 インヴェンション第1番は冒頭の2つの動機が対位法により模倣され、さまざまに展開され作曲されています。どのように模倣されているかアナリーゼをし、バッハの楽想を受け取りどのように展開されているか探りたいと思います。アナリーゼは付属の楽譜を参照してください。

 とりわけカンタービレ奏法を手に入れ

 クラヴィーアとは鍵盤楽器の総称で、バッハの場合はクラヴィコードかチェンバロがそれにあたります(※8)。クラヴィコードは鍵を押し下げると、鍵の先に着けられたタンジェントという金具が弦を押し上げ振動し音が鳴る楽器です。音量は小さいですが打鍵の強さにより強弱がつけられ、ベーブングというヴィブラートもかけられます(※9)。チェンバロは鍵を押し下げるとジャックという棒が持ち上がり、それに着いたプレクトラムが弦を下から上に弾き音を出します。打鍵による強弱はほとんどつきませんが、レジスターにより音色や音量を変えられます(※10)。カンタービレ奏法とは歌うような奏法と訳せますが、クラヴィコードやチェンバロの特徴をギターに取り入れカンタービレ奏法に近づきたいと思います。

※8、尾山真弓.「クラヴィーア作品」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.140-142.
※9、ウィキペディアの執筆者."クラヴィコード".ウィキペディア日本語版.2018-08-13.https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89&oldid=69568107,(参照 2019-11-16).
ピティナ.ピアノ曲事典"クラヴィコード".http://www.piano.or.jp/enc/kenban/clavichord.html,(参照 2019-11-16).
読売新聞オンライン動画."大塚直哉さん 古楽器を語る(3)18世紀末のクラヴィコード".YouTube.2018-08-21.https://www.youtube.com/watch?v=6rw7j60HVhM,(参照 2019-11-16).
※10、ウィキペディアの執筆者."チェンバロ".ウィキペディア日本語版.2019-09-20.https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%AD&oldid=74315155,(参照 2019-11-16).
洗足オンラインスクール."本学のチェンバロについて".https://www.senzoku-online.jp/MOVIES/MI/harpsichord_senzoku/,(参照 2019-11-16).

 加えて作曲の強い前触れが湧き起こる

 対位法によりさまざまに展開されたこの曲を演奏し理解することで、作曲の前段階になると思います。バッハがどのように作曲を教えていたかというと、フォルケルの「バッハの生涯と芸術」によれば、まず四声の通奏低音に取りかかり諸声部を書き込んでいくことを求めました。次いでコラールに進み、バッハがバスを書き弟子にアルトとテノールを考えさせました。それから次第にバスも弟子に作らせました。また、音楽的に考える能力を持たない者には、作曲にたずさわるべきでないという率直な助言を与えました。その上で、和声の準備が終わっている時には、フーガの指導に取りかかりました。作曲の練習でバッハが厳しく促したのは、一つはクラヴィーアなしに頭の中で自由に考えて作曲すること。二つには個々の各声部自体の連関ならびに、同時に進行する諸声部に対するそれの関係に、絶えず注意を払いつづけることでした(※11)。

※11、フォルケル.『バッハの生涯と芸術』.柴田治三郎訳.岩波書店,1988,p.122-124.

 アナリーゼ

 インヴェンション第1番は3つの部分(1~6、7~14、15~22小節)からなり、それぞれにカデンツ(終止形)があります。AとBの動機、Aの中にある2つの要素(a1、a2)が反行や拡大も伴い模倣され展開しています。
 調性を見てみると主調(ハ長調)で始まり、最初のカデンツは属調(ト長調)、次のカデンツは並行調(イ短調)、そして最後に主調(ハ長調)に戻り終わっています。途中で何度も転調し、属調、並行調の他に、下属調(ヘ長調)や下属調の並行調(ニ短調)へも転調しています。
 また、上声部の3小節2番目の音(ラ)から4小節3番目の(ド)までと、19小節2番目の音(ド)から20小節3番目の(ラ)までは逆行(レトログラード)になっています。21小節の後半では、上声部をB(ド-シ-ド)とa2反行(ミ-レ-ファ-ミ)の2つの声部にみなせると思います。詳細は楽譜を参照ください。

「インヴェンション第1番」アナリーゼ1
「インヴェンション第1番」アナリーゼ2
「インヴェンション第1番」アナリーゼ3

 フレージングとアーティキュレーション

 まず、新音楽辞典(音楽之友社)によるとフレージングとは「フレーズの切り方のこと」(※12)で、フレーズとは「旋律線の自然な区切りをいい、散文における節ないし文に相当するもの。」(※13)とされています。また、ヘルマン・ケラーはフレージングを「詩における詩句の一行、散文における一つの単純な、それ以上分けられない文章と同じものと理解される」(※14)としています。フレージングは解釈により一様ではありませんが、ここではフレーズの始まりを(「 )で、軽く切って読点のような役割を( ,)で表しフレージングを試みました
 アーティキュレーションとは、新音楽辞典(音楽之友社)によれば「1フレーズ内の旋律をより小さな単位に区切り、それにある形と意味を与えること(たとえばスタッカートに奏するとか、レガートに奏する、など)。」(※15)とされています。
 パウル・バドゥーラ=スコダによるバッハのアーティキュレーションの基本は、次のようにまとめられると思います。順次進行は総じてレガートになるのに対し、広い音程や跳躍はノンレガートで演奏されること。「非和声音とその解決」に由来するレガートがあること。オクターブの跳躍は、ほぼ例外なくレガートにならないこと。三和音の分散型は、とりわけアレグロやフォルテにおいて、通常ノンレガートか(フィンガー)スタッカートで演奏されること。(※16)また、ヘルマン・ケラーも「2度はつなぎ、中位の音程をポルタートで軽く切り、大きな音程(これはその特色を表わして'跳躍'と呼ばれる)をはっきり切って奏くのが最も自然なアーティキュレーションである。」(※17)と述べています。
 ですので、2小節目1拍目の2つのソ、6小節目4拍目の2つのレ、14小節目3拍目、4拍目と15小節目1拍目は切って奏されるとよいと思います。21小節目4拍目のソはギターの音域上オクターブを変更しましたが、本来ソ―ソはオクターブの跳躍となりますので、ここも切って奏するとよいと思います。
 またバドゥーラ=スコダは、落ち着いた雰囲気の楽章において、多くの場合八分音符で書かれた「歩むように進行するバス」はノンレガート(短すぎないスタッカート)を利用した上で、表情豊かな旋律として弾かれると述べています。(※18)ですので、下声のa1の拡大や反行拡大の箇所はノンレガートで奏するとよいと思います。

※12、「フレージング」.目黒惇編.『新音楽辞典 楽語』.音楽之友社,1977,p.516.
※13、「フレーズ」.目黒惇編.『新音楽辞典 楽語』.音楽之友社,1977,p.516.
※14、ヘルマン・ケラー.『フレージングとアーティキュレーション―生きた演奏のための基礎文法』.植村耕三,福田達夫共訳.音楽之友社,1969,p.21.
※15、「アーティキュレーション」.目黒惇編.『新音楽辞典 楽語』.音楽之友社,1977.,p.12.
※16、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.133.
※17、ヘルマン・ケラー.『フレージングとアーティキュレーション―生きた演奏のための基礎文法』.植村耕三,福田達夫共訳.音楽之友社,1969,p.47.
※18、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.135-136.

 装飾音

 「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」には、バッハの手により装飾音の説明がされている装飾音表が書かれています。これを分かりやすくしたものと合わせて掲載します。この装飾音表は、バッハのすべての装飾音が書かれているわけではなく一部です。概略と書いてある通り、全くこの通り奏されるわけでもありません。今回は、インヴェンション第1番の中に書かれているトリル記号(トリルもしくはプラルトリラー)とモルデント記号(モルデント)を中心に述べていきます。

「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」装飾音表

「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」より
「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」装飾音表
上記を分かりやすくしたバッハの装飾音表

 バッハはこの装飾音表を書く以前に、フランス人ジャン・アンリ・ダングルベールの「クラヴサン曲集」(1689年)の中から装飾音表を筆写しています。これはフランクフルト大学図書館が所蔵していて、この装飾音表の他にニコラ・ド・グリニーの「オルガン曲集」(1699年)とシャルル・デュパールの「6つのクラヴサン曲集」(1701年)の筆写も残されています。(※19)グリニーもデュパールもフランス人です。

ジャン・アンリ・ダングルベールの「クラヴサン曲集」装飾音表
ジャン・アンリ・ダングルベール「クラヴサン曲集」より

楽譜へのリンク先

ジャン・アンリ・ダングルベール「クラヴサン曲集」

IMSLP
IMSLP. Pièces de clavecin (D'Anglebert, Jean-Henri).

バッハによる筆写

フランクフルト大学図書館
Universitätsbibliothek Frankfurt am Main. "Musikhandschriften / Mus Hs 1538 - Premier livre d'orgue".

 バッハはイタリアやフランスの音楽から大きな影響を受けたと言われています。(※20)ドイツのフルート奏者・作曲家のヨハン・ヨアヒム・クヴァンツは「近年来2つの民族が、特に音楽上の趣味を訂正するために貢献したというばかりでなく、その趣味の点で生来の気質に従い、特に互いに異なる面を見せている。それはイタリア人とフランス人である。他の国々は、この2つの民族の趣味に最も賛同を示し、いずれか一方に従い、そこから何かを得ようと努めた。」(※21)と「フルート奏法」(1752年)の中で述べています。
 このようなことから、インヴェンション第1番に書かれている と の2つの装飾音を中心に、当時のイタリアとフランスの装飾法とドイツへの影響や、当時の資料の中に書かれている装飾法について説明していきたいと思います。
 まずはフランスの音楽家による装飾音の説明からです。フランソワ・クープランは、「クラヴサン奏法」(1716年)の中で装飾について説明しており、また、「クラヴサン曲集 第1巻」(1713年)に装飾音表を載せています。

フランソワ・クープランの「クラヴサン奏法」装飾音表p.74
フランソワ・クープランの「クラヴサン奏法」装飾音表p.75
フランソワ・クープラン「クラヴサン曲集 第1巻」より

楽譜へのリンク先

IMSLP
IMSLP. Premier livre de pièces de clavecin (Couperin, François).

 また、同じくフランス人音楽家のジャン=フィリップ・ラモーも「クラヴサン曲集と運指法」(1724年)に装飾音表を載せています。

ジャン=フィリップ・ラモーの「クラヴサン曲集と運指法」装飾音表
ジャン=フィリップ・ラモー「クラヴサン曲集と運指法」より

楽譜へのリンク先

IMSLP
IMSLP. Pièces de clavecin avec une méthode (Rameau, Jean-Philippe).

 ダングルベール、クープラン、ラモーと見てみるとそれぞれ違いがありますが、この3人のフランス人はトリルを上方隣接音で開始しています。

ダングルベール、クープラン、ラモーのトリル

 バドゥーラ=スコダによると、17世紀の終わり頃まで、フランスの声楽曲のトリルは一般的に先主音に導かれ主音で開始されていたようだが、シャンボニエールの「クラヴサン曲集」(1670年)第1巻が登場して以来、鍵盤曲のトリルに関しては上方隣接音からの開始が推奨されるようになったと述べられています。(※22)ただ、下行進行でスラーが付いた場合のトリルは主音で始まります。クープランは、「クラヴサン曲集 第1巻」の装飾音表でスラーが付く場合を「トランブルマン・リエ・サン・ゼートル・アピュイエ」、スラーが付かない場合を「トランブルマン・デタシェ」として示しています。(※23)

クープランのトリル

 ラモーも下行進行でスラーが付いた場合のトリルを、主音で開始するよう「クラヴサン曲集と運指法」の中で説明しています。(※24)

ラモーのトリル

 また、クープランは「クラヴサン奏法」の中でトリルについて「私のクラヴサン曲集第1巻の装飾表の中では、トランブルマンが等価の音符で示されているが、しかし、トランブルマンは、終りより始めの方がゆっくりと演奏されなければならない。尤も、その速さの推移は、聞きわけられる程であってはいけない。」(※25)と述べています。そしてトリルには3つの要素、1.ラ・ピュイ(やどり、とどまり、ひっかかり)2.バットマン(交互反復)3.ポワン・ダレ(停止点)があることを「クラヴサン奏法」の中で述べています。(※26)
 バドゥーラ=スコダはポワン・ダレについて、フランスのトリルで後打音がない場合はポワン・ダレがあるが、後打音がある場合はポワン・ダレの後に後打音を弾く場合と、ポワン・ダレなしで後打音を弾くという2種類の方法があることを説明しています。(※27)
 では、イタリアの装飾法はどうでしょうか。バドゥーラ=スコダによれば、イタリアではトリルに厳格なルールが存在したことはなく旋律の流れに沿って付けられるものだったが、18世紀になり、まだ主音開始のトリルが好まれていたものの上方隣接音から開始されるトリルが紹介され、優勢になってきたと述べられています。(※28)村上隆はイタリアにおけるトリルはバロック時代初期には主音開始が普通で、トリルの始め方も自由でまちまちだったと述べています。(※29)また、クヴァンツはイタリアとフランスの音楽の趣味を作曲・歌唱・奏法において特徴をあげ比較し、「一口でいうなら、イタリアの音楽は任意だが、フランスのものは制約されている。」(※30)と述べています。
 ドイツ(当時は神聖ローマ帝国)はというと、バドゥーラ=スコダによれば17世紀の中部および南ドイツの装飾法はイタリアと同じ、中部および北ドイツで使用されていた装飾記号の標準化は困難だが、17世紀の終わり以降になるとフランスの影響が頻繁に見られると述べられています。(※31)クヴァンツは「フルート奏法」の中で、トリルは均等または同一の速さで打つこと、上または下からの前打音と2つの音からなる後打音が書かれていてもいなくても付加されることを説明し、トリルの速さ(トリルの回数)について主音開始の譜例で例示しています。(※32)バッハの息子カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは「正しいクラヴィーア奏法 第1部」(1753年)の中で、トリルを4種類に分けて説明しています。これを要約すると次のように言えると思います。まず、標準トリラーで、これは上方隣接音から開始するトリルで、下から上へ進む2つの音からなる後打音が付くことがあること。次は下からのトリラーで、これは下からの前打音を付けた主音開始のトリルで後打音がつくことがあること。3番目は上からのトリラーで、これは上方隣接音から順次進行で下行する3音からなる前打音を付けた主音開始のトリルのこと。4番目は半トリラーまたはプラルトリラーで、これはレガートで下行2度の時にあらわれ先行音とタイで結ばれた後、主音開始で3音からなるトリルのこと。プラルトリラー以外のトリラーは音価いっぱいに弾き続けること。トリルを弾く際に禁じられた5度進行が生じないようにすること。(※33)そして、プラルトリラーについて、「このトリラーは、カデンツやフェルマータのとき以外には、3つまたはそれ以上の音符が下降していくパッサージュにも用いられる(譜例116〔Fig.XLVIII〕)。そしてこのトリラーは、つぎに下降することを好む、後打音なしのトリラーの性格を持つことから、その後打音なしのトリラーと同様に、長い音符の後に短い音符が続く場合にも用いられる(譜例117〔Fig.XLIX〕)。」(※34)と述べています。

カール・フィリップ・エマヌエルのトリル

 しかし、プラルトリラーのところで、長い音符の後に短い音符が続く場合にも用いられるとの説明で用いられた譜例では、跳躍進行の後にプラルトリラーが付けられています。この場合先行音とタイで結ばれることはできません。(※35)

カール・フィリップ・エマヌエルのプラルトリラー

 また、カール・フィリップ・エマヌエルはスタッカートで急速な音符にあらわれ、プラルトリラーと同じ音の動きをする装飾音をシュネッラーと名付けました。このシュネッラーは、その後に順次下行することを好み、レガート音符にあらわれないと説明しています(※36)

カール・フィリップ・エマヌエルのシュネッラー

 クヴァンツはプラルトリラーを半トリルと述べ、前打音の後につく場合と、順次下行する3連音符の最初につくことを説明しています。そして半トリルは後打音がつくことがあることも譜例で示しています。先行音とタイで結ばれるようには述べていません。(※37)

クヴァンツのプラルトリラー

 ここまで見てきた中でトリルを表すのにトリル記号長いトリル記号トリル記号trが使われ、さらにプラルトリラーもトリル記号トリル記号trで表されています。バドゥーラ=スコダは長いトリル、短いトリル、プラルトリラーを示すのにトリル記号trトリル記号長いトリル記号などが混在して使われ、トリル記号trが長いトリルを、トリル記号がプラルトリラーを指示するよう習慣化したのは18世紀末になってからのことと指摘しています。(※38)
 また、主音から開始されるプラルトリラーはバッハの後の時代からと言われることについて、バドゥーラ=スコダは、エルンスト・ルードヴィヒ・ゲルバーが編纂した音楽家事典(ライプツィヒ、1790-1792年)、トマス・デ・サンタ・マリーアの「ファンタジア奏法」(バリャドリド、1565年)や、フレデリック・ノイマン「Ornamentation in Baroque and Post-Baroque Music」(1978年)からの引用でヴォルフガング・ガスパー・プリンツの例も挙げ反論しています。(※39)
 一方モルデントは、フランス人のダングルベール、クープラン、ラモーはパンセと述べていますが、主音から始まり下方隣接音に1回から複数回下行した後に主音へ戻る装飾音と言えます。(※40)

ダングルベール、クープラン、ラモーのモルデント

 クヴァンツは前打音に続くモルデントについて、カール・フィリップ・エマヌエルはモルデントには長いものと短いものがあるとして次の譜例のように説明しています。(※41)

クヴァンツ、カール・フィリップ・エマヌエルのモルデント

 また、カール・フィリップ・エマヌエルは「モルデントは、順次と跳躍進行の別を問わず、とにかく上昇する音符を好む。跳躍して下降する音符のときにはあまりあらわれず、下降2度のときにはまったく現れない。モルデントは曲の初っ端、真ん中、および最後に用いられる。」(※42)と説明しています。
 モルデントについては、下方隣接音に1回から複数回下行した後に主音へ戻る装飾音ということで共通化が見られます。しかし、トリルについては開始される音が主音なのかそれ以外なのか、プラルトリラーとなるのかトリルなのかを記号からだけで判別することはできません。これについては対位法も鑑み判断していきます。また、バドゥーラ=スコダは、17世紀にモルデントはその補助音が主音の上方隣接音でも下方隣接音でもどちらでもよく、イタリアとスペインでは「上行モルデント mordente superiore」と「下行モルデント mordente inferiore」という用語で残っていると述べています。(※43)余談ですが、イタリア人マッテオ・カルカッシの「ギター教則本Op.59」やそれを基に日本で出版されている溝渕浩五郎編著「カルカッシギター教則本」など、また、小原安正監修「教室用 新ギター教本」で、モルデントの補助音を主音の上方隣接音で解説しているのはこのためだと思われます。(※44)
 現在までに至るバッハの演奏法についてバドゥーラ=スコダは、1920年頃までバッハは主にロマン派音楽のスタイルで演奏されていたが、アーノルド・ドルメッチとワンダ・ランドフスカの登場によって変わり、歴史的な考証をふまえた演奏を求めるようになり、現在では時代の表現に忠実(オーセンティック)な演奏が主流となっていると述べています。(※45)しかし、バドゥーラ=スコダは「バッハ作品の演奏法-とりわけ装飾法-に関し、現代では意見の一致がほとんど見られない」(※46)ことを指摘し、理由として、「バッハ当時から今日まで一貫して伝承された演奏習慣がないことと、バッハ本人がどのように演奏し、そして自作をどのように演奏してほしかったかに関する当時の人々の詳細な証言が存在しないため」(※47)と述べています。
 それでは、装飾音について今までのことをふまえ、インヴェンション第1番をみていきます。まず、第1、2小節目についているトリル記号は、「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」の中のバッハ直筆の装飾音表によれば上方隣接音から開始されるトリルですが、主音開始のプラルトリラーとする意見もあります。これはカール・フィリップ・エマヌエルの「プラルトリラーは、先行音符をその次の音符にレガートするもの」(※48)、「プラルトリラーは下降2度の後〔原著では『前』〕にしか用いられない」(※49)を根拠にしていると思われます。バドゥーラ=スコダは、レガートのスラーが書かれていなくてもレガートで奏されることについて「バッハは鍵盤楽器の作品にはスラーをほとんど記入しておらず、演奏者は当時の対位法の規則に従ってこれを補っていました。」(※50)と述べています。また、第1小節目のトリル記号は導音、第2小節目のトリル記号はV7の和音の第7音になります。これに上方隣接音から開始するトリルをつけるとそれぞれの音の性格が弱まってしまうと思います。村上もこの個所について「トリルが導音に付されているので、上隣音からはじめれば前後に出てくる主音とあわせて4回(主要音はじまりであれば3回)導音が打ち鳴らされることで、導音の性格が弱まるのはたしかです。」(※51)と述べています。このような理由から、今回は主音開始のプラルトリラーで奏したいと思います。また、野平一郎はこの装飾音を上方隣接音から開始するよう説明していますが、「siのトリルを上(do)から演奏することで、do-si-doという元の形が不明確になってはならない。」(※52)とも述べています。
 次に5小節目のモルデント記号は下方隣接音に1回から複数回下行した後に主音へ戻る装飾音です。モルデントとして、バッハ直筆の装飾音表どおり下方隣接音に1回下行した後に主音へ戻るよう奏したいと思います。
 6小節目のトリル記号は、跳躍進行の後の音符に付いていることとカデンツの部分であることから、バッハ直筆の装飾音表の1番目のとおりに上方隣接音から開始するトリルでよいと思います。
 8小節目のトリル記号は、下行2度であらわれていますのでプラルトリラーでもよいと思いますが、フレーズの終わりの部分ですのでバッハ直筆の装飾音表の1番目のとおりに上方隣接音から開始するトリルで奏したいと思います。
 13小節目のモルデント記号は5小節目と同じようにバッハ直筆の装飾音表どおり、下方隣接音に1回下行した後に主音へ戻るモルデントとして奏したいと思います。
 14小節目のトリル記号は、下行2度であらわれてさらに次の音へ順次進行で下行していますが、カデンツの部分ですのでバッハ直筆の装飾音表の1番目のとおりに上方隣接音から開始するトリルで奏したいと思います。
 次に記譜されていない箇所に装飾音を付ける場合について考えたいと思います。バドゥーラ=スコダは、カデンツ(終止形)について「たとえ装飾記号が書かれていなくても、装飾音を付加すべき場所には追加しなければなりません。そのひとつはすでに述べた通り、終止形における最後から2番目のブロック(ドミナンテ)です。ここにある音符には音楽の流れに従ってトリル、プラルトリラー、まれにはモルデントが補われなければなりません。」(※53)と述べ、また、主題の反復について「どのような作品でも、主題が繰り返し現れる場合、当初その主題に加えられた装飾はその後も―演奏可能な限り―同じように奏されるべき」(※54)と述べています。カール・フィリップ・エマヌエルは「模倣はすべて、ごく細部にいたるまで正確におこなわなければならない。」(※55)と指摘しています。また、バドゥーラ=スコダは繰り返し部分で最初は単純に、繰り返しの時に装飾を加えて奏する例として「組曲のサラバンド」「平均律クラヴィーア曲集第2巻のプレリュード第9番 BWV878」「パルティータ第1番のメヌエットII BWV825」をあげています。(※56)
 それでは、終止形・主題の反復(模倣)・繰り返し部分に着目して、装飾音を付加していく箇所を見ていきたいと思います。まず、下声7小節目、8小節目にあらわれるB動機については、1小節目、2小節目のB動機の模倣ですので、同様にトリル記号(主音開始のプラルトリラー)を付けることができると思います。上声7小節~8小節目のA動機の最後の音にトリル記号が付けられていることから、8小節~10小節目にあらわれるA動機、A動機の反行は、7小節~8小節目のA動機を模倣して装飾音を付加したいと思います。8小節~9小節目のA動機の最後の音は前の音から上行していますのでモルデント記号(下方隣接音に1回下行した後に主音へ戻るモルデント)を、9小節~10小節目のA動機の反行の最後の音は前の音から下行していますのでトリル記号(フレーズの終わりの部分ですので上方隣接音から開始するトリル)を付加するとよいと思います。第2の部分(7小節~14小節)は、主題の反復(模倣)において記譜されていない箇所に装飾音を付ける場合になっています。上声の20小節4拍目はカデンツに装飾音が記譜されていない箇所なので、ミの音にトリル記号(上方隣接音から開始するトリル)を付加したいと思います。「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」では、この部分にトリル記号が付けられています。(※57)
 インヴェンション第1番の装飾音について考察してみましたが、あくまでいろいろな解釈の中の私の考える1つの例であり、絶対ではないことを付け加えておきたいと思います。

※19、東川清一.「フランスの音楽」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.421-423.によると、シャルル・デュパールの「6つのクラヴサン曲集」は1709/1712年ころ、ニコラ・ド・グリニーの「オルガン曲集」は1709-1712年ころ、ジャン・アンリ・ダングルベールの「クラヴサン曲集」の中の装飾音表は1710-1712年ころ、の筆写しであろうと言われています。
※20、樋口隆一.「イタリアの音楽」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.31-33.
東川清一.「フランスの音楽」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.421-423.
※21、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ.『フルート奏法』.荒川恒子訳.全音楽譜出版社,1976,p.300.
※22、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.337.
※23、Couperin, François. Pièces de Clavecin Premier Livre. Paris, 1713, p.74.
※24、Rameau, Jean-Philippe. Pièces de Clavessin avec une Méthode pour la Méchanique des Doigts. Paris, 1724.
※25、フランソワ・クープラン.『クラヴサン奏法』.山田貢訳.シンフォニア,1978,p.14.
※26、フランソワ・クープラン.『クラヴサン奏法』.山田貢訳.シンフォニア,1978,p.14.
※27、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.338.
※28、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.330-331,p.336-337.
※29、村上隆.『バッハ《インヴェンションとシンフォニア》創造的指導法』.音楽之友社,2011,p.70.
※30、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ.『フルート奏法』.荒川恒子訳.全音楽譜出版社,1976,p.312-313.
※31、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.354-355.
※32、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ.『フルート奏法』.荒川恒子訳.全音楽譜出版社,1976,p.88-89.
※33、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.104-122.
※34、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.121.
※35、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.121.
※36、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.164-165.
※37、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ.『フルート奏法』.荒川恒子訳.全音楽譜出版社,1976,p.84,p.141.
※38、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.380.
※39、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.314-315,p.326-327,p.354.
※40、D'Anglebert, Jean-Henri. Pièces de Clavecin. Paris, 1689.
Couperin, François. Pièces de Clavecin Premier Livre. Paris, 1713, p.74-75.
Rameau, Jean-Philippe. Pièces de Clavessin avec une Méthode pour la Méchanique des Doigts. Paris, 1724.
※41、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ.『フルート奏法』.荒川恒子訳.全音楽譜出版社,1976,p.84.
カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.144.
※42、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.145.
※43、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.326.
森田学.『音楽用語のイタリア語』.改訂新版.三修社,2011,p.115.
※44、Carcassi, Matteo. Méthode complète pour la Guitare Op.59. Mainz, B. Schott's Söhne, 1836, p.45.
溝渕浩五郎編著.『カルカッシギター教則本』.改訂新版.全音楽譜出版社,1999,p.66.
原善伸監修,上谷直子訳.「カルカッシ完全ギター教則本Op.59」.『現代ギター』.2019年3月臨時増刊号,No.666,p.61.
小原安正監修.『教室用 新ギター教本』.ギタルラ社,1977,p.49.
※45、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.312-313.
※46、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.314.
※47、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.314.
※48、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.119.
※49、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.120.
※50、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.426.
※51、村上隆.『バッハ《インヴェンションとシンフォニア》創造的指導法』.音楽之友社,2011,p.82-83.
※52、J. S. バッハ.『インベンションとシンフォニア 解説付』.New Edition.野平一郎解説・運指.音楽之友社,2014,p.7.
※53、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.589.
※54、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.590.
※55、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ.『正しいクラヴィーア奏法 第1部』.東川清一訳.全音楽譜出版社,2000,p.88.
※56、パウル・バドゥーラ=スコダ.『バッハ 演奏法と解釈―ピアニストのためのバッハ』.今井顕監訳.全音楽譜出版社,2008,p.587,p.592~595,p.596.
※57、Bach, Johann Sebastian. Clavier Büchlein vor Wilhelm Friedemann Bach. Köthen, 1720.

 ギターでの表現について

 1723年直筆の「インヴェンションとシンフォニア」の序文に書かれた「とりわけカンタービレ奏法を手に入れ」という部分について、ギターで演奏する際にはどのようにするか考えてみたいと思います。カンタービレ(cantabile)はイタリア語で「歌うように」と訳されたり、音楽用語として使われたりしています。フレージングとアーティキュレーションで述べたとおり、フレーズの区切りを感じ、読点のような箇所では軽く切り、そしてアーティキュレーショを付けて奏することで、歌うための曲の基本的骨格が見えてくると思います。
 トン・コープマンは「ベーブングBebungは、クラヴィコードの鍵盤をさらに押し下げることによっておこなうヴィブラートであり、1750年ごろに非常に好まれた演奏法でした(C.Ph.E. バッハ等参照)。」(※58)と述べています。クラヴィコードでのベーブングをギターで模して、15~18小節の2分音符はヴィブラートをかけてみるのも面白いと思います。また、チェンバロでのレジスター、カプラー、バフ・ストップを模して、ギターでも音色の変化をつけることができます。弦を弾く右手の位置をブリッジ側に寄せて弾くことで音色を硬めで明るい感じにすることもできますし、ネック側に寄せて弾くことで音色を軟らかく感じられるようにすることもできます。他にも右手の弾く位置を変更せず、右手のタッチで音色を変えられます。7~14小節の部分は、このようにして音色を変えて弾いてみるのもよいと思います。

※58、トン・コープマン.『トン・コープマンのバロック音楽講義』.風間芳之訳.音楽之友社,2010,p.104.

 あとがき

 J.S.バッハのインヴェンション第1番について詳しく調べていくうち、せっかくなのでレッスンに活かすだけでなく文章にまとめてみようと思いました。最初はもう少し簡単にまとまると思っていましたが、かなり長くなってしまいました。しかし、もっと深めたかったことや、深め足りなかったこともありましたので、課題にしておきたいと思います。「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」の冒頭と「インヴェンションとシンフォニア」の序文のドイツ語原文も自分で翻訳しました。古いドイツ語のためスペルが今と違っていて、辞書に載っていない単語もあり苦労しました。今回、インヴェンション第1番についてだけでなく、バッハの演奏法や教育法についてもたくさんのことを理解し知ることが出来ました。
 ギターでインヴェンション第1番、その他のバッハ作品を演奏する際に、お役に立てば幸いです。

 参考文献

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