J.S. バッハ「インヴェンション第1番」解説

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J.S. バッハ「インヴェンション第1番」解説と当時の演奏法
ギターアレンジと装飾音を中心に
Invention 1

ギターでの表現について

1723年直筆の「インヴェンションとシンフォニア」の序文に書かれた「とりわけカンタービレ奏法を手に入れ」という部分について、ギターで演奏する際にはどのようにするか考えてみたいと思います。カンタービレ(cantabile)はイタリア語で「歌うように」と訳されたり、音楽用語として使われたりしています。フレージングとアーティキュレーションで述べたとおり、フレーズの区切りを感じ、読点のような箇所では軽く切り、そしてアーティキュレーショを付けて奏することで、歌うための曲の基本的骨格が見えてくると思います。

トン・コープマンは「ベーブングBebungは、クラヴィコードの鍵盤をさらに押し下げることによっておこなうヴィブラートであり、1750年ごろに非常に好まれた演奏法でした(C.Ph.E. バッハ等参照)。」(※58)と述べています。クラヴィコードでのベーブングをギターで模して、15~18小節の2分音符はヴィブラートをかけてみるのも面白いと思います。また、チェンバロでのレジスター、カプラー、バフ・ストップを模して、ギターでも音色の変化をつけることができます。弦を弾く右手の位置をブリッジ側に寄せて弾くことで音色を硬めで明るい感じにすることもできますし、ネック側に寄せて弾くことで音色を軟らかく感じられるようにすることもできます。他にも右手の弾く位置を変更せず、右手のタッチで音色を変えられます。7~14小節の部分は、このようにして音色を変えて弾いてみるのもよいと思います。

※58、トン・コープマン.『トン・コープマンのバロック音楽講義』.風間芳之訳.音楽之友社,2010,p.104.


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