J.S. バッハ「インヴェンション第1番」解説と当時の演奏法
ギターアレンジと装飾音を中心にInvention 1
加えて作曲の強い前触れが湧き起こる
対位法によりさまざまに展開されたこの曲を演奏し理解することで、作曲の前段階になると思います。バッハがどのように作曲を教えていたかというと、フォルケルの「バッハの生涯と芸術」によれば、まず四声の通奏低音に取りかかり諸声部を書き込んでいくことを求めました。次いでコラールに進み、バッハがバスを書き弟子にアルトとテノールを考えさせました。それから次第にバスも弟子に作らせました。また、音楽的に考える能力を持たない者には、作曲にたずさわるべきでないという率直な助言を与えました。その上で、和声の準備が終わっている時には、フーガの指導に取りかかりました。作曲の練習でバッハが厳しく促したのは、一つはクラヴィーアなしに頭の中で自由に考えて作曲すること。二つには個々の各声部自体の連関ならびに、同時に進行する諸声部に対するそれの関係に、絶えず注意を払いつづけることでした(※11)。
※11、フォルケル.『バッハの生涯と芸術』.柴田治三郎訳.岩波書店,1988,p.122-124.